そもそもビッグデータとは?
ここではとっても簡潔に説明します。ビッグデータとは、その名の通りビッグなデータ、大量のデータという意味です。ビッグデータの活用とは、大量のデータを見ることで今まで見えなかった事実を抜き出すことができるかもしれない、ということです。
事例としては、コンビニやスーパーで顧客のデータを集め、どのような商品が同時に売れているかを調べ、仕入れや配置を考えるといったものが良く挙げられます。その中でも最も有名な成功例として、「ビールとおむつ」の例があります。アメリカのスーパーの売り上げ分析を行ったところ、ビールとおむつが同時に売れる傾向があることがわかりました。一見なんの関係性もないものから組み合わせを見つけ出せることから、ビッグデータが注目され始めました。
ビッグデータの落とし穴
しかし、ここで問題なのは「本当に新しいことが見えるのか?」ということです。その保証は無くても、ビッグデータの分析にはコストがかかります。また、この問題は言い換えると「ビッグデータじゃないと見えないことなのか?」という事と同じです。投資するのならば、この質問の答えが一番知りたいですよね?
実は、ビッグデータの成功事例、とくに介護に関する事例のほとんどは、ビッグデータじゃなくても簡単な統計学を知っていれば見つけられることばかりです。統計学というと、少し難しい感じがするのですが、「味噌汁の味見」と「選挙の出口調査」の例で考えてみましょう。
選挙の出口調査は、投票所の一部の人にインタビューするだけで、開票結果をほぼ正確に言い当てることができます。これは、統計学の考え方をフルに使っているからなのです。全部を開票しなくても、ある一定程度のデータさえあれば、ほぼ正確に全体像をつかむことができるのです。味噌汁だって、一口だけすすれば、全体の味がわかるはずです。ビッグデータじゃなくても分かることを、ビッグデータでしなきゃ!といっているのは、「最後の一票を開票するまで何もわからない!」と言ってることや「味噌汁を全部飲み干さないと味は確認できない!」と言うのと同じ、とっても無駄なことなのです。
具体的には、単純な平均を出しているだけではビッグデータの意味は皆無です。もっと少ないデータでもほぼ同じ結果が簡単にでます。
さらに言えば、ビッグデータを分析できても、具体的な対応策や行動がわからなければ、経営の視点からは全く意味がありません。分析結果は活用して初めて価値を持ちます。分析しただけでは何もしなかったのと同じどころか、かかった費用の分マイナスです。
ビッグデータより簡単ですぐに使える方法
上述のように、ビッグデータを使わなくても、統計学さえ知っていれば多くの事例は解決します。さらに言えば、統計学も知らないでビッグデータなど扱えるわけもありません。でも、統計学を勉強するのは大変だとお考えではないでしょうか?実は誰でも簡単に統計学の利点を使う方法があります。それはA/Bテストです。
2010年代から「ビッグデータ」が盛んに注目されてきた中、2013年のオバマ米大統領の再選に大きく貢献したのがWebページのA/Bテストでした。内容はとっても簡単。2つのWebページ(A案とB案)をあらかじめ用意しておき、アクセスしに来た人をランダムにAとBのどちらかに飛ばすだけ。後はAとBどちらのページにアクセスした人が、より良い反応をするかを見ます。良かったほうをその後の選挙戦で採用したというわけです。
施設でも簡単にできます。例えば、下剤使用量を減らしたいときに、いろいろな方法があるはずです。どの方法が本当に効果があるのか知りたい、より具体的に「オリゴ糖は高齢者の便秘を解消するのか?」ということを知りたいとします。まずは利用者を完全にランダムに2つのグループにわけます。Aグループの方にはオリゴ糖を摂取してもらい、Bグループには何もしない。しばらくデータを取った後に、2つのグループで排便間隔にどれだけの変化があったのかを見ればよいだけです。これならできそうですよね?
このようにA/Bテストを行うとケアの方針や経営方針を決めやすくなります。何故そうなるかなんて小難しい事はさておき、何をすべきか、次の行動が具体的に明確になります。
SUMMARY
結論をまとめると
・ビッグデータじゃなくても良いケースがたくさん
・ビッグデータで経営課題に取り組むのは非常に困難
・A/Bテストでお手軽に成果が出せる